どこかでオススメされていたのを見て、気になって購入。著者は「アドボカシー・マーケティング」の訳者。
●自分にとって特に参考になった部分の整理
アドボカシー理論を図式化した基本フレームである「アドボカシー・ピラミッド」を紹介しましょう。
「アドボカシー・ピラミッド」では、TQMと顧客満足が、ピラミッドの土台として全体を支えており、いずれもアドボカシーの必要条件です。TQMや顧客満足という基盤がなければ、ピラミッドはつぶれてしまいます。
顧客からの信頼を獲得して行くには、TQMと顧客満足が必須だよね、というお話。当たり前なのだけれど、何となーくやっているのではなく、きちんと仕組み化出来ている所は少ない気がします。
細分化してポジションを設定すると言うより、ポジションを浮き出させるのです。
企業が顧客を細分化して、競合他社を見て自社が担うべき市場にターゲティングし、そのターゲットに併せた製品やサービスのポジショニングを考えることは、企業側に立った発想でしかありません。市場の細分化や競合他社を気にしたターゲティングといったマーケティング手法に終始してはいけません。
セグメンテーションするときの主な手法はデモグラフィックかサイコグラフィックですが、杓子定規に切ってしまい、実は顧客を把握出来ない、ということがあります。そうではなく、顧客の声に耳を傾けて、ニーズを満たすコンセプトを開発する事の重要性を説いている。
とはいえ、一概にSTPを否定するのではなく、あくまで顧客ニーズを探るオプションであることを意識したい。大事なのは、自身の環境にどれが適当なのかを考えることだと思う。
顧客の声を生かすためには、3つの要素が揃っていることが必要です。
第一に、正確で十分な情報の収集です。顧客とのあらゆるタッチポイントから、正確な情報を引き出すことが出来るようにします。人が受ける場合もITガ受ける場合も、すべての情報が同じインフラ上に乗ることが重要です。
第二に、集まった情報が自動的に整理され、マーケティング分析される仕組みを整えます。様々な情報の整理がされておらず、それらを引き出してせいりするための膨大な時間を要するようでは、日常的に使用することはできません。また、分析を行うのは実際データを使う人ではなく、分析専門のスタッフが行い、分析結果を利用する部門に伝える事ができると、一歩踏み込んだマーケティングが行えます。
最後に、情報と分析結果を確実にじっこうするための全社的な体制づくりが必要です。VOCは、製品開発や改善に利用できるだけでなく、宣伝や営業などすべての企業活動に広範囲に利用できるものです。経営者からの発信により、全社員がVOCの重要性を認識し、全社的に、そして迅速に活用される体制をつくり上げるのです。単発的に利用するのではなく、自動的に行われるようなサイクルを構築できれば、顧客志向企業の仲間入りです。
VOCを最大限に生かすためのポイント。このシステムを独自に行えれば、それだけでも競争優位の源泉になりそう。
ロイヤリティのはしご
Advocate:擁護者
↑ ↑
Supporter:支持者
↑ ↑
Client:得意客
↑ ↑
Customer:顧客
↑ ↑
Prospect:見込み客
ロイヤリティが発生するのは「支持者」から。常に顧客満足を得るか、もしくは期待を大きく超えた価値を実感し感動を受けることにより、「得意客」は「支持者」になる。ロイヤリティのレベルが高まると、企業や製品・サービスを他の人たちに推奨してくれる「擁護者」となる。エヴァンゲリストとも言うのかな。
発信力の強い人に擁護者がいると、かなり効果的。例えば、ディズニーランドにおけるフジモンとか。
正直、誠実といった信頼を形づくる基本的なものに深く関わっているのが、「透明性」という要素になります。ゆえに、透明性はアドボカシーの最も基本的な要素です。
顧客の力が強まっている現代では、組織や商品、サービスの実力以上にアピールしても、完全に見破られます。それよりも、透明性を重視した活動が重要。先日のキャノンの採用に関するメッセージも、とても透明性があったと思う。
http://teiki.saiyo.jp/canon-mj2011/contents/dm_2/index.html
顧客のニーズと合致しない製品を強引に売り込めば、顧客を創造するのではなく敵を創造することになる。それは、そもそもマーケティングのコンセプトではない。
「新アイデアは利用者のニーズから生まれる」を徹底して、期待を超えた驚きを顧客に与えることにより、顧客から高い支持を得ています。
MKタクシーへのコメント。何事も徹底し、それに基づいて行動したり、システムを作ったりすることはとても重要。考えているだけ、言っているだけでは何も生まれてこない。MKのコンセプトは「他社に負けない安さで、きれいでグレードの高い車両と最高のサービスを提供する」こと。
アドボカシー戦略では、自社の相対的な品質の高さがなければ、他社製品を薦めることになります。価格に対する製品・サービスの品質が競合他社に比べて高い企業は、顧客のあらゆるニーズに対して自社製品で答えることができます。
顧客のニーズを迅速に製品開発に反映して、競合他社の一歩先を行く品質を提供し続ける企業は、競争優位を築くことが出来ます。
他社の製品を薦めるのは勇気がいること。でも、アドボカシーのコンセプトを踏襲するのであれば、それが正しい。常に競争意識を持つ、という観点ではアメーバ経営も近いコンセプト。
経営の意思を顧客に伝えるために、顧客接点を持つ従業員は、企業の経営戦略を正確に理解し、顧客に伝える事が重要になります。顧客は様々な形で企業に接することになるので、すべてのタッチポイントで、統一的に経営者の心が伝わるサービスを提供出来れば、信頼できる企業と顧客から評価してもらえるでしょう。
サウスウエスト航空の「座席指定なし」システムへのクレームに対して、客室乗務員は「サウスウエスト航空の運賃が安い理由の一つ」であると話し始めて、どれだけコストセーブ出来るか、座席数の有効活用が出来ているか、論理的に説明した。乗客は彼女が自分の会社の戦略をよく理解しているのに感心した、というお話に対して。
ブランディングの観点からも、とても大事なこと。顧客は表層的なデザインだけではなくて、様々なタッチポイントでブランドを評価している。
顧客と深く繋がりすぎると、未来の商品の提案につながらない場合があるのです。顧客の声を聴くことはもちろん大事なのですが、顧客の声はあくまで現状に対するものなので、未来に向けた提案まで期待することはできません。顧客の声を生かして、新しいイノベーションを提案するのは企業の仕事なのです。
なんでもかんでも依存して思考停止してはダメ、という教訓。
製品の価値に差異がなく、書いては価格を購買の判断基準としている業界は、アドボカシーの導入が難しくなります。価格競争に適しているのは、信頼できる企業より効率の良い企業だからです。
ここは少し疑問。「信頼」は結果であって「効率」と並列する概念ではない気がする。(アドボカシーマーケティングを「顧客との信頼に主眼を置いたマーケティング活動」とするのであれば)コモディティ化している業界には、その業界ならではの信頼を勝ち取るパターンがあるのではないかなと思う。
以下の部分も同様。
顧客側に視点が移っている点で、アドボカシー・マーケティングとニッチマーケティングに共通点はあります。しかし、アドボカシーが対象とするのはマス市場であり、限定したセグメントに特別な性hんを提供することはしません。
逆に、ニッチ市場では、企業と顧客のつながりに特別なものがあり、信頼より顧客が期待する特別な製品の機能やデザインを提供することで、関係が強まることが一般的です。アドボカシー哲学が通用しない独自の世界が成立している市場ともいえるでしょう。
全体的に現代にマッチしていてとてもおもしろい本だった。STPのコンセプトを基にしているので、マーケティングを学んだ人にオススメ。

Comments 2
書評ありがとうございます。
Posted 07 2月 2010 at 11:52 ¶今後ともよろしくお願い申し上げます。
>山岡さま
Posted 07 2月 2010 at 17:44 ¶わざわざコメントありがとうございます:-)
本、とてもおもしろかったです。次回作も楽しみにしております。
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